デモを何社見ても差がつかない理由

MES選定でデモを3社見ると、たいてい印象は「どこも良さそう」に着地します。デモは各社が最も強い業務シナリオで設計されており、しかも実演者は製品を最も深く理解しているプリセールスです。差が出ないのは当然です。

差が出るのは、想定外の質問への答え方です。即答するのか、持ち帰るのか、持ち帰った回答が何日で戻るのか、戻ってきた回答に数字と根拠があるのか。この3点だけでも、導入後のサポート品質はかなりの精度で予測できます。

そこで、その場で答えられるかどうかで実力が分かれる62問を整理しました。狙いは「正解を持っている会社」を選ぶことではなく、「分からないことを分からないと言い、期限を切って調べて返す会社」を見つけることです。

7カテゴリ62問の内訳

#カテゴリ問数何を測る質問か
1製品アーキテクチャ11提供形態、コンテナ対応、エッジ実行、拡張の方法
2標準規格・相互運用9ISA-95、OPC UA、B2MML、オープンAPI、MCP対応
3導入プロジェクト8体制、要員の実名、標準工数、フィットギャップの進め方
4AI・データ活用8AI機能の実装層、課金単位、学習データの扱い、精度の担保
5保守・アップグレード9リリース頻度、適用停止時間、カスタマイズの追随
6契約・ライセンス10課金単位、価格改定、解約条件、データ返還
7ベンダーの事業継続性7資本構造、日本法人の役割、開発拠点、EOL方針
合計62

各問に「質問文」「聞く目的」「良い回答の例」「注意すべき回答の例」の4つを添えてあります。そのままメールに貼り付けて送れる形式です。

効く質問を5つ抜粋します

Q11. 直近12か月に出荷したメジャーバージョンと、適用に要した平均停止時間を教えてください

リリース頻度と、更新の実務負荷を同時に測る質問です。バージョンアップが年1回で1回あたり2日停止する製品と、四半期ごとで無停止更新できる製品では、5年間の運用工数が桁で変わります。Siemensは2026年8月リリースのOpcenter MES Medical Device 2607でKubernetes+Linuxコンテナ化によるゼロダウンタイム更新を打ち出しており、この領域は各社の差が開いている最中です。「お客様の環境によります」だけで数字が出てこない場合は、実績値を持っていない可能性があります。

Q19. ISA-95への対応方針を、2025年改訂版の変更点に対してどう対応するかで説明してください

ISA-95 Part 1は2025年4月10日に15年ぶりに改訂され(ANSI/ISA-95.00.01-2025)、モジュラー/コンテナ化アーキテクチャ、メタデータによるデータ中心アプローチ、共有オントロジーとセマンティックモデルが盛り込まれました。「ISA-95に準拠しています」という回答は2010年版を指していることがあります。どの版を指しているかを言えるかどうかが、この質問の実質的な採点対象です。詳しくはISA-95 2025年改訂の記事を参照してください。

Q34. AI機能はMES本体のライセンスに含まれますか。含まれない場合の課金単位を教えてください

2026年のベンダー構成では、AI機能がMES本体ではなく別レイヤーに置かれる例が増えています(Siemens Intelligence Center X、AVEVA CONNECT+Cognite、Honeywell Forgeなど)。見積書の合計金額だけを比べると、AI機能込みの製品と別売りの製品が同じ土俵に並んでしまいます。課金単位(ユーザー数・処理件数・データ量・エージェント数)まで確認してください。

Q54. 解約時に当社データを標準形式で全量エクスポートできますか。費用と所要日数は

「エクスポート機能はあります」で終わらせず、スキーマ定義つきか/全履歴か/追加費用は発生するか/何営業日かかるかの4点を書面で求めます。MESに10年ぶん蓄積された工程実績は代替不能な資産です。2025〜2026年にMES/産業ソフト業界では大規模な再編が続いており(Proficyの売却とVelotic発足、SchneiderによるCognite買収など)、契約時のベンダーが5年後も同じ体制とは限りません。

Q59. 本製品の開発拠点はどこですか。日本法人はどこまで意思決定できますか

不具合の修正依頼が本国の開発部門に届くまでに何段階あるか、日本市場固有の要求(帳票、元号、労働慣行)を製品ロードマップに載せる権限が日本法人にあるかを確認します。この質問への回答が曖昧な場合、稼働後の改善要望はほぼ通らないと考えたほうが実態に近くなります。

質問リスト62問をお送りします

回答の読み方つきの62問リスト(Word/Excel)を無料でお送りします。貴社の業種・規制要件に合わせた質問の追加もご相談ください。

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回答をどう記録するか

質問リストと一緒に、A4横1枚の採点表を同梱しています。記録する項目は4つだけです。

  1. 即答/持ち帰りの別。 持ち帰りの割合そのものは減点材料ではありません。問題は持ち帰った件数のうち、期限内に回答が返ってきた比率です
  2. 回答の返却日数。 提案期間中の返却速度は、稼働後の一次回答速度とかなり相関します
  3. 数字・証跡の有無。 「対応しています」なのか、「バージョン○○以降、ドキュメントの第○章に記載」なのか
  4. 回答者の所属。 営業が答えたのか、プリセールスか、本国の技術部門か。同じ内容でも、答えた人の階層で信頼度は変わります

MESの選び方の記事で挙げた評価軸を質問文に落としたものが本リストです。集めた回答は選定チェックシート87項目の該当カテゴリに転記すると、そのまま評価表になります。アナリスト評価の扱い方についてはGartner Market Guideの記事も併せてご覧ください。

62問すべてに答えてもらう必要がありますか

ありません。実務では30問前後に絞って使われることが多く、リストにも「最小構成24問」の印をつけてあります。優先度が高いのはカテゴリ6(契約・ライセンス)とカテゴリ7(事業継続性)で、この2つは機能比較では絶対に見えない領域です。

当社は既にMESを導入済みです。使う場面はありますか

あります。保守契約の更新交渉と、バージョンアップの可否判断でそのまま使えます。特にカテゴリ5(保守・アップグレード)とカテゴリ6(契約・ライセンス)は、既存ベンダーに投げる質問としてよく使われています。回答が渋い項目が、そのまま次回リプレース時の論点になります。

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無料です。また、ご請求いただいた情報を第三者(ベンダーを含む)に提供することはありません。当社が提案に参加していない案件でも、そのままお使いいただけます。