何が稼働したのか

2026年7月、EUは実施法(Implementing Act)と6つのDPP標準によりDPPレジストリの枠組みを確立し、7月20日にレジストリが稼働開始しました。法的根拠はEcodesign for Sustainable Products Regulation(ESPR、規則(EU) 2024/1781)です。

事業者は対象製品をEU市場に上市する前にレジストリへ登録する必要があり、レジストリが一意の登録識別子(Registration Identifier)を生成し、QRコード経由で物理製品とデジタルパスポートを紐づけます。2026年9月には残りのDPP標準に関する実施決定が予定されています。

適用スケジュール──鉄鋼は2026年、繊維・タイヤ・アルミは2027年

製品グループの適用順序は、バッテリー(電池規則で先行)に続き、鉄鋼(2026年)繊維・タイヤ・アルミニウム(2027年)家具(2028年)マットレス・ICT製品(2029年)です。各委任法令の採択後には18カ月の移行期間が置かれます。

現場実装も進んでいます。Hannover Messe 2026ではFraunhofer FFBが、生産設備からOPC UAで機械データ・プロセスパラメータ・品質情報を収集し、バッテリーパスポート・リポジトリへ流すPoCを実演しました。Catena-X、IDTA、OPC Foundation、CEN/CENELECなど標準化団体が横断的に参加しており、DPPを「コンプライアンス文書」ではなく製造からリサイクルまでのデジタルスレッドとして実装する路線が固まりつつあります。

MESユーザー・検討中の企業への影響

DPPに載るデータ──ロット、工程パラメータ、品質記録、材料構成──の発生源はMESです。欧州では「DPP=MESの新しい出力仕様」という理解がすでに定着しています。対象製品群をEUへ輸出する日本企業は、レジストリ登録そのものより先に、パスポートに書く中身を自社の実行系から取り出せるかを確認する必要があります。

制度の全体像はDPPは「MESの新しい出力仕様」であるの記事を、先行するバッテリーはEU電池規則とバッテリーパスポートの記事を、2027年適用の業種はESPR:繊維・タイヤ・アルミが2027年に来るの記事を参照してください。