定義──ISPEが発行する「規制ではない」業界標準
GAMP 5は、国際製薬技術協会(ISPE)が発行するGxP規制下のコンピュータ化システムに関するリスクベースアプローチのガイドです。初版のGAMPガイドは1990年代に英国で生まれ、第5版(GAMP 5)が2008年に発行されました。現行版は2022年7月発行の第2版(GAMP 5 Second Edition)で、クラウド、アジャイル開発、オープンソースへの対応に加え、付録D11でAI/機械学習を初めて扱いました。重要なのは、GAMP 5自体は法規制ではないことです。FDAの21 CFR Part 11やEU GMP Annex 11といった規制要求を、どういう方法論で満たすかを示す「業界の共通言語」であり、当局査察でも事実上の参照枠組みとして通用します。
誤解されやすい点──「準拠」という言葉の中身
「GAMP 5準拠のMES」という表現には注意が必要です。GAMP 5はソフトウェアを次のカテゴリに分類し、カテゴリごとに検証の深さを変えます。
| カテゴリ | 内容 | 検証の深さ |
|---|---|---|
| カテゴリ1 | インフラソフトウェア(OS・DB等) | 最小 |
| カテゴリ3 | 設定なしで使う既製品 | 小 |
| カテゴリ4 | 設定して使う既製品 | 中〜大 |
| カテゴリ5 | 個別開発ソフトウェア | 最大 |
MESパッケージは通常カテゴリ4(構成設定製品)ですが、アドオンやカスタム開発部分はカテゴリ5として扱われ、検証負荷が跳ね上がります。つまり「GAMP 5準拠」はベンダーの製品性質の説明にすぎず、導入時の検証工数は自社がどれだけカスタマイズするかで決まるのです。また、GAMP 5第2版はテストの網羅性より「クリティカルシンキング」を重視する方向へ舵を切っており、FDAのCSA(Computer Software Assurance)最終ガイダンス(2025年9月24日公示)とも整合します。「GAMP 5だから重厚長大な文書が必須」という理解は、すでに古くなっています。
実務でこの用語が出てきたら確認すべきこと
- カテゴリの切り分け──提案構成のうちどこまでが標準機能(カテゴリ4)で、どこからがカスタム(カテゴリ5)か。バリデーション費用見積もりの根拠がここにあります
- サプライヤ評価──GAMP 5はベンダーの品質システムを活用して検証を軽くする考え方を取ります。ベンダー側のテスト証跡を流用できるかを確認します
- AI機能の扱い──AI検査や予測機能を使うなら、GAMP 5第2版付録D11と、2025年7月発行のISPE GAMP AIガイド(290ページ)が参照先になります
深く知る
- GAMP 5第2版とISPE AI Guideの関係
- FDA Computer Software Assuranceでバリデーション工数はどう変わるか
- EU GMP Annex 22──MESに載るAIに何が要求されるか
GAMP 5に「認証」はありますか?
ありません。GAMP 5はガイドであり、ISOのような第三者認証制度は存在しません。「GAMP 5認証取得済み」という表現が出てきたら、その意味(自己宣言なのか、監査を受けたのか)を確認すべきです。
GAMP 4以前との違いは何ですか?
GAMP 5(2008年)で「一律の検証」から「リスクベースの検証」へ転換し、第2版(2022年)でクラウド・アジャイル・AIに対応しました。現在GAMP 4を参照する実務上の理由はありません。
