B2MMLは「ISA-95の実装形」である

B2MML(Business To Manufacturing Markup Language)は、ISA-95(IEC 62264)が定義するオブジェクトモデルとトランザクションを、実際にシステム間で送受信できるスキーマとして定義したものです。MESA Internationalが開発・公開しており、無償で利用できます。バッチ製造向けにはISA-88のモデルを実装したBatchMLが同梱されています。

ISA-95本体は「生産スケジュールにはこういう情報が含まれる」というモデルを定義しますが、それをERPからMESへ送るときの具体的なメッセージ形式までは規定しません。その空白を埋めるのがB2MMLです。ISA-95の8パート構成で言えば、主にPart 2・4のオブジェクトとPart 5のトランザクションを実装しています。

最新版はVersion 7(2020年11月24日リリース)で、ソースはGitHub(MESAInternational/B2MML-BatchML)で公開管理されています。リリース履歴も差分もGitHub上で追跡できるため、「対応バージョン」をベンダーに確認する際の照合先が明確です。

v7の変更点──JSONスキーマの追加が最大のニュース

変更点内容
対応標準の更新ISA-95/IEC 62264の2018/19年版のモデルに対応
JSONスキーマの提供B2MML史上初。XMLスキーマ(XSD)に加え、同じモデルをJSONで転送可能に
空間位置情報資産・材料等の空間的な位置(spatial definition)を表現可能に
材料・リソースの試験情報材料テスト・リソーステストの結果情報を追加
標準化されたエラーメッセージ処理トランザクション失敗時の応答を標準化
作業カレンダー稼働日・シフトを表現するワークカレンダーを追加

出典はMESAのv7リリース発表(Automation.com掲載)とGitHubリポジトリです。なお、v7以降に新しいメジャーバージョンが出たという一次情報は確認できません(2026年8月時点)。「最新のB2MML」は2020年のv7を指すと考えて差し支えありません。

XMLかJSONか──選定の実務基準

v7でJSONが加わったことで、「B2MMLを使う=XML」ではなくなりました。使い分けの目安は次のとおりです。

  • XML(XSD)を選ぶ場合:ERP側・ESB側に既存のXML処理基盤がある。スキーマバリデーションを厳格に効かせたい。過去のB2MML実装(v6以前)との互換を維持したい。
  • JSONを選ぶ場合:REST APIやメッセージブローカ中心のアーキテクチャに載せたい。クラウドMESやiPaaSとの接続で、開発者がJSONを前提にしている。

重要なのは、どちらを選んでも運ばれるモデルはISA-95で同一という点です。転送形式の議論とデータモデルの議論を分離できることが、B2MMLを使う最大の利点です。2025年4月10日改訂のISA-95 Part 1が「メタデータと標準ベースのコンテキスト化」を掲げた方向性とも整合します。

ERPとMESの間でB2MMLメッセージが交換される構図 ERP(レベル4) 計画・受注・在庫 MES(レベル3) 実行・実績・品質 生産スケジュール(Production Schedule) 生産実績(Production Performance) B2MML v7(2020年11月24日) XMLスキーマ+JSONスキーマ(初) モデルの正:ISA-95/IEC 62264(2018/19年版)
B2MMLが埋める位置。ISA-95のモデルを、ERP⇔MES間の実メッセージに変換する

MES-ERP連携でどう使うか

B2MMLの実務価値は、連携仕様書の議論を短縮することにあります。ERP側とMES側が別ベンダーの場合、連携メッセージの項目定義から始めると数カ月単位の調整になりますが、「生産スケジュールはB2MMLのProductionScheduleをベースに、拡張項目のみ別紙で定義」という進め方にすれば、議論は差分に集中できます。

MES-ERP連携の設計では粒度・タイミング・キーの3点が論点になりますが、B2MMLはこのうち「項目とその意味」を固定してくれるため、残る設計判断が明確になります。また、バッチ産業ではISA-88のレシピモデルを実装するBatchMLが同じリポジトリで提供されており、レシピ情報の交換にも同じアプローチが取れます。

B2MMLの利用にライセンス費用はかかりますか?

かかりません。MESA Internationalが無償で公開しており、GitHubリポジトリからスキーマ一式を取得できます。ただし、B2MMLが実装しているISA-95標準そのものの本文を読むには、ISA/ANSIから標準文書を購入する必要があります。スキーマは無償、標準本文は有償、という関係です。

自社はREST API中心の構成ですが、B2MMLを使う意味はありますか?

あります。v7からJSONスキーマが提供されているため、REST APIのペイロードとしてB2MMLモデルをそのまま使えます。API仕様を自社で一から定義する代わりにB2MMLの項目定義を流用すれば、将来のシステム更改や他システム接続の際に「意味の定義」を引き継げます。転送方式とデータモデルは分けて考えるのが原則です。

B2MMLは今後も更新されますか?

GitHubで公開管理されているため、更新があればリポジトリ上で追跡できます。2020年11月のv7以降、新しいメジャーバージョンのリリースは確認されていません(2026年8月時点)。採用判断にあたっては、リポジトリのリリースページで最新状況を確認することをお勧めします。